素顔が見られる、女の子投稿型フォトダイアリー。
「藤の花とともに揺れる私の人生」
第14章: 広島の壁と再会の予感
短大を卒業する頃、家族の状況に少しずつ変化が訪れていた。父は体調を崩しがちで、仕事も休みがちになり、両親は昔の家、鹿児島への移住を真剣に考え始めていた。そんな中、私は就職が決まり、これから始まる社会人生活に胸を躍らせていた。
しかし、人生はいつも予定通りにはいかないものだ。入社初日、私に告げられたのはまさかの広島出向命令だった。
「広島…また言葉の壁か…」
頭をよぎったのは、かつての方言との格闘の日々。正直、広島弁という未知の世界に足を踏み入れることに恐怖しかなかった。
広島での仕事は事務職。新しい環境に飛び込むのは初めてではないものの、やっぱり苦労の連続だった。特に方言。
「ほいじゃけぇ〜」
「たいぎいけぇ〜」
……何を言っているのか、まるで暗号。職場の人たちは親切だったが、どうしても言葉の壁に阻まれ、「頑張ろう」と何度も自分に言い聞かせる日々だった。
それでも、1年経つ頃には少しずつ慣れ始め、本社に戻るという人事異動の知らせを受けたときには、広島への愛着すら芽生えつつあった。そして本社では、なんと社長秘書としての業務を任されることになった。
秘書業務は忙しく、仕事に追われる毎日だったが、そんなある日、一本の電話が私の元に届いた。
「あの日の彼」からだった。
「久しぶりに会おうよ。」
懐かしい声。けれど、私の心はざわついていた。恋愛というものにどうしても踏み込めない私にとって、この誘いは軽いものではなかった。
「どうしよう…何を話せばいいの?」
電話を切った後、私はしばらく考え込んだ。嬉しい気持ちと不安が入り混じり、頭の中で色々なシナリオが浮かんでは消える。
彼に会うべきか、それともこのまま仕事に集中すべきか。電話一本でこんなに悩む自分が少しおかしくも思えたけれど、その夜、私は眠れぬまま窓の外を見つめていた。
再会は人生の新たな章の始まりか、それともまた波乱の予兆なのか――。